「みまわりこびと」を知っていますか。 真夜中のしんと静まりかえる白い冬の農場で みんなの眠りをひとりでそっと見守っているという。
長い長い冬。 雪に閉ざされた農場では 恵みの夏を迎えるため、人も動物も ゆっくりと心とからだを休めます。 だれもがぐっすりと眠りにつくのです。
としをとった小人は、毎晩、月明りのなか みんなの眠っている場所を訪れます。 雪の上にてんてんと続く小さなあしあとだけを残して。 人間には、小人のすがたは見えません。 それでもみんな、小人がいるのを知っています。 小人はみんなに小人の小さな言葉でそっと話しかけます。
冬は きて、 またさっていく もの。 夏は きて、 またさっていく もの。 あと すこしで、夏をつげる つばめが やってくる。
耳にはきこえないその言葉。 でも、みんなにはちゃんとわかるのです。
スウェーデンの妖精トムテ。 北欧の言い伝えによく登場し赤い帽子をかぶった子どもくらいの大きさで 農家にすみついて繁栄をもたらすといわれています。 それを聞くと、ちょっと日本のざしきわらしみたいですね。 この絵本は、『長くつ下のピッピ』「探偵カッレくん」シリーズなど 数々の名作を生み出した児童文学作家アストリッド・リンドグレーンが トムテについて書かれた古い詩から創作したおはなしなのだそう。 そして、動物や人を見守る心の優しいトムテと心に残る冬景色をあたたかく 情景たっぷりに描いたのは、懐かしいのにモダンで繊細な色使いが印象的なキティ・クローザー。 絵本をひらいた瞬間に、妖精トムテとのその冬の世界にひきこまれます。 寒い厳しい冬はつらいのですが、お家の中の暖かな温もりを思い出す とても素敵な絵本です。
(富田直美 絵本ナビ編集部)
雪のうえに残った、ちいさな足あと。それは、冬の夜、雪にとざされた農場を、順々にこびとがみまわっているのです。牛、馬、ひつじ、にわとり……そしてにんげんの子どもたち。長い冬のあとには夏がやってくると、勇気づけるように語りかけていくこびと。 北欧ではおなじみのこびとのトムテはスウェーデンのサンタクロースともいわれる農家を守る妖精。そのこびとについてうたった古い詩をもとに、児童文学作家アストリッド・リンドグレーンが1960年代初頭に書いたお話が長い年月を経て再発見されました。その文章にアストリッド・リンドグレーン記念文学賞受賞作家であるキティ・クローザーが絵を添えてできたのがこの絵本。ふたつの才能が見事にぶつかり合った、奇跡のコラボレーションによる珠玉のクリスマスストーリー。
冬の真夜中。
森の農場で。
たった一人起きている、こびとがいます。こびとは、そっと農場をみまわります…。
読み始めると、冬の夜の静謐さに包まれるようで、鼻の奥に冷たい空気が流れくるようでした。こびとはどこまでも大きく、優しく、読んでいてほっとします。
キティ・クローザーさんの絵が、とても良いです。
大人にも、子どもにも、お勧めしたい1冊です。
(こはこはくさん 50代・ママ 男の子13歳)
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