時はいくさの時代。若者はみな兵隊になる時代のお話です。 子どもの時のけがが原因で徴兵されずに、人里はなれた岬でたった一人で灯台を守っている若者、周平さん。仕事を終えたある日の明け方、周平さんのもとに、白い着物を着た黒髪の若いむすめがたずねてきます。むすめは、以前周平さんに助けられた鳥だといい、恩返しにやってきたのでした。楽しそうによく笑うむすめにつられて笑うことが増えた周平さんは、生まれてはじめて胸がほかほかあたたまるしあわせを知ります。 むすめにおよめさんになってもらいたいと伝える周平さんに、むすめは、人間の姿にしてもらった時に海の神に申し渡された二つのおきてがあることを明かします。そのおきてを守っていく決意をして夫婦となった二人でしたが、しあわせは長くは続かず…。
次第に忍び寄る戦争の暗い影。その緊迫した状況下で、互いを守ろうとした周平さんとむすめの身に起こった出来事とは…。
作者は、数多くのファンタジー作品を描く一方で、『ちいちゃんのかげおくり』や『おはじきの木』など作品を通して戦争の悲惨さを描き続けているあまんきみこさん。読み終えた後に自然に平和を願わずにはいられなくなるような胸を打つ物語は、深く心に残り続けます。 『鳥よめ』は30年以上前に実際に灯台で仕事をしていた海上保安員の方に取材され、長い時間をかけて物語として熟成されたのだそう。その物語に山内ふじ江さんが、しなやかで美しい鳥よめの姿と幻想的で色彩豊かな風景を描かれ、悲しくも美しい世界が創り出されました。
2015年は、戦後70年となる節目の年。この節目の年に多くの人に届けたいという思いで世に送り出された、平和への祈りがたっぷりこめられた愛の物語。子どもから大人までこれから長く読み継がれていく1冊となることでしょう。 物語を通して、戦争が引き起こす深い悲しみの感情がわきあがり、平和の尊さを強く実感せずにはいられません。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
灯台を一人で守る若者、周平さんのもとに、ある日、一人の若い娘がやってきました。娘は周平さんに命を助けられた鳥で、周平さんにお礼を言うために海の神さまに姿を変えてもらったのでした。二人はやがて仲のいい夫婦になり、幸せに暮らし始めますが、戦争の影がしのびより……。あまんきみこが平和への深い祈りをこめて描く、美しく悲しい愛の物語。
【著者コメント】 この国の灯台のあかりがすべて消えたのは、私が子どもの頃――いくさの時代でした。さらに空襲にそなえて、灯台のかたちがわかりにくいように、色がぬられたり木々でおおわれたりしたのです。小さな灯台であかりを一人で守っていた若者のもとにやってきた鳥よめ。いくさがはげしくなって、二人のしあわせは長く続きません。二人の悲しみの深さについて思いをめぐらせてもらえれば……と、心から願っています。 あまんきみこ
親の私ももちろん戦争を知らない世代で,なかなか実際に戦争について子供達が体験者から話を聞ける時代ではなくなってきました。
戦争の悲惨さや悲しさについて知り平和の尊さ大切さについて考えるには,本は不可欠ではないでしょうか。
こちらの本は小学校中学年くらいから一人読みできると思います。 (まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子8歳)
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