時は平安、京の都。 おそろしい“もののけ”が出るとうわされ、打ち捨てられた屋敷がありました。 あるとき、物知りとたいそう評判の高い、宰相を務めるひとりの男が、この屋敷を買うと言いだします。 周囲の反対も意に介さず、とうとう引っ越しをしてしまった宰相。 すると、うわさの通りに得体の知れないものが現れて――!
今昔物語集におさめられた説話をもとに、新たに絵本として描いた今昔物語絵本シリーズの5作目。 九十九神、精霊、妖怪変化…… もののけたちの棲家と化した屋敷で、次々起こる不気味な事件。 物知りの宰相が、その知恵を駆使して怪奇に対峙するわけですが…… この宰相がただ知恵ばかりあるだけという人物でもないところがおもしろいところ。
天井にびっしりと浮かび上がった人間の顔にもぜんぜん動じず、続けて現れたもののけの大群には、まるで虫を追い払うがのごとく厄払いの米をぱぱっ、と撒くだけ。
恐怖は未知より生まれ出る、とはよく聞く言説ではありますが、いくら知恵者とはいえこの宰相は肝が座りすぎている! ぞっとするような不気味な現象と、まるきりへっちゃらな宰相とのギャップで、”怖いのに笑える”というなんだか不思議な読み味に……。
「正しい知識さえ持っていれば怖がることはない」というメッセージは、動物や自然に対する態度として現代にも通じるもの。 だからこそ、当時はそれだけあやかしやもののけが自然の一部として人々のあいだに息づいていたのだなと、はるかな平安の情景がみずみずしく思い浮かばれます。
怪奇と人とが共存する時代。 平安の空気を現代に伝える、魅惑の古典世界を絵本で!
(堀井拓馬 小説家)
今は昔、京の都に、妖怪などのもののけが出るといううわさの屋敷がありました。長いあいだ、うちすてられていましたが、あるとき、国のだいじな仕事をしている宰相が、その家を買いたいと言いだします。まわりの人がどんなにとめても、宰相は耳をかしません。とうとうひっこしをしてしまいました。 住みはじめるとさっそく、あやしいことがおこります。庭にうめられていた鍋が人の形になってあらわれたり、夜中に小さなおじいさんがあらわれて、寝ている人のほほを冷たい手でなでたり、天井の格子に何十という人の顔があらわれたり……。 『今昔物語集』に収められた4つの説話をもとにした創作絵本。平安時代の人々がゆたかな想像力で生みだしたさまざまな怪異は、現代のわたしたちをも驚かせます。
もののけがいるからと長い間打ち捨てられていた屋敷に引っ越しをした宰相は、自分の力でもののけたちを追い出しました。
普通の一般的な人々では、こうはならなかったでしょう。
この絵本を読むと、知識や度胸がいかに大切かを思い知らされます。
分かっていれば、何も怖いことはないのですね。
日々をのんべんだらりと過ごすのは、やめた方がよさそうです。
大変勉強になりました。 (めむたんさん 40代・ママ 男の子21歳)
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