「戦争だけは絶対にはじめてはいけない」
日本の戦争に向き合い、戦争の過程を精緻に解明してきた半藤一利。その原点は中学2年で体験した東京大空襲だった。 開戦から日に日に苦しくなる下町の生活。そして3月10日。猛火を生きのびた半藤少年は焼けあとでちかった。 半藤一利の初の絵本を描くのは、大胆な画風で注目を集める絵本作家・塚本やすし!
小学校中学年以上向け。 小学校3年生以上の漢字にルビ。用語解説の注あり。
「歴史探偵」を自認していた作家の半藤一利さんが亡くなったのは、コロナ禍が猛威をふるっていた2021年1月のことでした。享年90歳でした。
自身初めての絵本となったこの作品は2019年7月に刊行されたものです。そのテーマは「戦争」です。
半藤さんは1930年で東京の向島に生まれました。
この絵本のはじめの方では、友だちと遊びころげていた姿が描かれています。
そんな生活が一変したのが、1941年12月のアメリカとの開戦でした。その時の町の人々の表情が「晴れ晴れとして明る」かったと、半藤さんは記憶しています。
しかし、いろんなものが生活から消えていきます。大好きだったベエゴマ、動物園の動物たち。
やがて、町の人たちから笑顔も消え、母ときょうだいも疎開し、15歳の半藤さんは父と二人残ることになります。
そして、1945年3月10日、東京下町に大量のB29機が襲いかかってきます。東京大空襲です。
その時の様子を半藤さんはこの絵本で詳細に綴っています。
生きるのも死ぬのも、わずかな違いだったともいえます。そんな生死の境を半藤さんは生き延びました。
「いざ戦争になると、人間が人間でなくなります」と、半藤さんは書いています。
焼きあとに立った半藤さんは、自分が死なないですんだのも偶然だし、生きているのも偶然、この世に「絶対」はないと思います。
そして、「絶対」という言葉を使わないで生きていきます。
そんな半藤さんですが、この絵本でその言葉を使って、こう語りかけます。
「戦争だけは絶対にはじめてはいけない」
絵本の形でこのメッセージが残された意義を伝えていかなければなりません。 (夏の雨さん 60代・パパ )
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