いつはじまったのか、わからないけれど、夜になるとやってくる、あのもやもやした何か。それは、毎晩やってきて、何なのかわからなくても、こわくて目が覚める。なんだか自分が、けずられていくみたい……。自身がうつ病を経験した作者が、それがどんなものなのか、言葉ではどうしても説明できなくて、絵ならと表現した絵本です。読者の方のお一人にでも何かがつたわりますように。
絵本というのは「テキスト(ことば・文章)とイラストレーション(図像・絵)で、さまざまな「情報」を伝達する表現媒体」だという。(『ベーシック 絵本入門』から)
つまり、受け手である読者を幼年期の子どもたちに特定しているわけではない。もちろん、実際はその多くの読者は子どもたちであるのは間違いないが。
巻末にある作者略歴によれば、「動物を主人公にした温かい絵本」もたくさん描かれているから作者を絵本作家といっていいだろう。
それに、この本の判型は絵本版といってもいい。
ただ、この作品は「若い人に向けたうつ病」をテーマにした作品でアマゾンでもランキング上位だという。
これこそ、「さまざまな「情報」を伝達する表現媒体」という絵本の定義に合致している「絵本」といっていい。
描かれているのは、白と黒の世界。
「きりみたい」などよんとしたよるの世界。
主人公の女の子はそんな夜に襲われて、「むねがどきどきして、おなかもいたくて、」自分ではなくなっていく。
絵本ではそんな夜がドラゴン<竜>として描かれている。
女の子はそんなドラゴンから必死で逃げようと試みる。
「よるなんてこわくない……」
女の子はそんなよるが「いつかはおわるはず」だとどこかでわかっている。けれど、負けそうになる。
けれど、彼女は負けない。
巻末の「作者あとがき」にデビ・グリオリは「私の絵から5人にひとりはいるという、うつ病経験者がどのように苦しんでいるのか」を感じ取ってもらえたらと書いている。
そんな苦しい夜は「いつかおわる」のだからというメッセージとともに。 (夏の雨さん 60代・パパ )
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