ふたりの子どもたちが向きあっています。 「『あっちいけ』とか『きらいだー』とかいったら、どうなる?」 ……よく見ると、ふたりのあいだにギザギザの穴があいています。
次のページでは……「『いっしょにあそぼう』とか『こっちへおいでよ』とかいったら、どうなる?」 楽しそうな子どもたちの間に、赤いギザギザの小さな木が、幹となってすっくと立っています。
「ふん!」「ぷん!」と背中を向けたら? 「あのさ」とか「ねえねえ」と声をかけたら? ページをめくるたび、左の場面では縦長の穴が、右の場面では同じ形の木の幹が浮き上がる、しかけ絵本です。
『おなじそらのしたで』(ひさかたチャイルド)、『いのちの木』(ポプラ社)、『かべのむこうになにがある?』(BL出版)など、優しいまなざしで哲学的な絵本を描く、ブリッタ・テッケントラップ。 深みのある色づかい、自然や生きものをとらえた美しい造形には、心をしんと撫でつける優しさとひそかな華やかさがあります。
小さな亀裂から大きくなっていく溝と、一方で、どんどん大きく育っていく一本の木。 ちょっとした言葉に心を揺らしながら、子どもたちが心で育てるものの大きさを、1本の木に象徴させるように描いた作品です。
「こころのなかで もっと もっと おおきく やさしいきもちが そだちますように」 絵本ならではの、あざやかに展開する世界をあじわってくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
穴の仕掛けを使って友達に対する「思いやり」や「わがまま」を表現。見開き左側のギザギザの穴は友達と仲が悪くなると亀裂が大きくなり、見開き右側の木の幹の形をした穴は友達への思いやりを大切にすると成長するように作られており、仲の悪い子どもたちは思いやりの画面へと導かれます。木の幹は友達と大きな輪を作れるほど太く大きく成長し、子どもたちの心の揺れにやさしく語りかけてくれる絵本となっています。
『Kindness Grows』が原題。
明るいオーラの表紙の力強さが印象的です。
実は一種の仕掛け絵本です。
何やらギザギザの穴が開いているではありませんか。
どうやら、木の幹のようですが、物語が始まるとびっくり。
二人の関係性を左右で対比させてあるのですね。
右のページでは、そのギザギザが木の幹となって成長するのに対して、
左のページでは、見えない亀裂として存在します。
そう、同じ形が、見え方によって変わるということでしょうか。
次々と提示されるシチュエーションは、応対一つで違った光景になることを教えてくれますね。
亀裂は深く鋭く、木の幹は温かく成長して。
もちろん、左のページの収拾のつかないシチュエーションにも救いの手。
まさに手をつなぐことのすごさを体感できそうです。
最後のページで使われるスリットもドラマチック。
幼稚園児くらいから、道徳教材としてもいいと思います。 (レイラさん 50代・ママ )
|