神井航樹には、この春、大学4年生になる息子がいる。就職活動に悩む息子の様子を妻から聞いた航樹は、ひさしぶりに訪ねた銀座の街を歩きながら思い出していた。かつての自分の就活を。そして、就活の末に入社した、銀座に本社を構える紙の専門商社「株式会社銀栄紙商事」で過ごした数年間を。製紙メーカーによって抄造される紙の多くは代理店と呼ばれる特約商社が仕入れ、販売している。銀栄紙商事は、それら代理店のなかで中堅に位置していた。時は80年代。まさに雑誌の黄金期である。代理店各社は、用紙の確保に知恵を絞り、奔走していた……。
本は紙でできている――それは、時代が変わっても変わらない。雑誌黄金期に紙の「仕入」に奮闘する若者の仕事と恋を描いた、ハートフルな人間ドラマ。
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