「ラッキーボーイ」という名の犬がいました。でも犬は初めから幸福だった訳ではなかったのです。 最初に飼われていたのはちょっと忙しすぎる家族。庭の片隅に閉じ込められ、食事も投げる様にに与えられ、お風呂に入る事もなく真っ黒になっていました。名前さえもなかったのです。そんな犬が塀ごしに聞いたおじいさんのぶつぶついう声。彼は穴を掘り始めました。隣の庭に出られるくらいの深い穴を、必死で・・・。一方のおじいさんは妻を亡くして孤独と悲しみの中で生きていたのです。 疎外された犬、孤独な老人、二人の出会いは偶然?必然?名前をもらい、体を洗ってきれいになった犬の為におじいさんはご飯を作ってやり、寝床を用意し・・・おじいさん自身も生き生きした生活の楽しさを取り戻していくのです。 決して他人事ではない、弱き者小さき者の存在。そして孤独や悲しみ。こういった題材を扱いながらも前向きな、愛の溢れる内容になっているという事が重要なんだと思います。自分や周りの人がそういう存在になった時、避けられない悲しみにぶつかった時。色々な逆境の中にあっても出会いで人生が救われる事があるという訳者の柳田邦男のメッセージもこもっています。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
はじめは、ラッキーではなかった。名前さえつけられず、ほっておかれた。ある日その犬は、塀ごしにぶつぶつひとりごとを言う、お隣のおじいさんの声をきいた。そこで犬は…。妻を亡くして悲哀に沈むおじいさんの生活に犬は〈ラッキーボーイ〉としてあらわれた。孤独な老人と犬の、幸せな愛の物語。
犬にまだ名前がないときは、ガスティン家では全く存在感のない犬でした。
どうして連れてこられたんだろう、どうして相手にしてもらえないんだろう。
それでも犬は従順、自分の境遇を受け入れていました。
犬に名前が与えられたとき、犬は家族になりました。
奥さんを亡くして寂しかったおじいさんの良き友となりました。
塀一つを隔てた二つの家の違い。
犬の境遇とともに二つの家族の姿をくっきりと浮かび上がらせました。
ガスティン家は寂しい家族です。
いつも追い立てられるように行動して、回りが良く見えないかわいそうな家族に思えてしまいます。
自分の家にいた犬がいなくなったことも、その犬がそばにいることもわからないのですから。
しっくりとしたお話にぴったりのモノトーンの線画。
柳田邦夫さんがこの本を選んだ意味が伝わってきます。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子13歳)
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