過酷な運命を背負った少女カットニス・エバディーンを主人公に据えたディストピア小説『ハンガー・ゲーム』シリーズの前日譚。 主人公は、カットニスの宿敵ともいえる、恐ろしい独裁者コリオレーナス・スノー。 バラをトレードマークにし、いかなる毒にも耐性があり、誰も信用しない老大統領──彼にも少年時代があった。 それも、高貴な家柄に生まれたものの両親と死別し、祖母といとことともに貧しい生活に耐えながら、必ずのし上がると自分に言い聞かせていた時代が。
コリオレーナスが教育係を務めた第十二地区の少女、ルーシー・グレーは「ハンガー・ゲーム」で勝利した。 だが、彼のひそかなたくらみは、なぜか彼を目の敵にする学部長ハイボトムにすべて見破られていた。 はや治安維持部隊に志願する以外の道は残されていなかった。髪を刈り上げ、キャピトルに別れを告げて、コリオレーナスは絶望を抱えて列車に乗り込む。 向かう先は、最終地点──第十二地区だ。だが、思いがけない展開が彼を待っていた。
解説:三辺律子
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