「うろおぼえ」なのに、お買い物! これは波乱の物語の予感です。
どうやら、このアヒルの一家、みんながみんな「うろおぼえ」気質。
朝、「あれ、なんではやおきしたんだっけ?」 「たしか、『お』がつくものをするためだったきがするなあ。」 「おさんぽ?」「おなら?」「ちがうよ、そうだ、おかいものだよ!」
出かける前から「うろおぼえ」のオンパレードですが、何とか出発。 ところが、何を買いに行くのか「うろおぼえ」で、読者にも明かされないのです。 さあ、みんなで「うろおぼえ一家」の出すヒントから、お買い物の品を考えましょう。
しかくい? おもい? しまる? つめたい? ひかる?
読んでいくうちに、このヒントすら揺らいできます。ミステリーに、モヤモヤ、ムズムズ、謎は深まるばかり。 とりあえず、次々と「うろおぼえ」のまま、買い物をすませていきますが、最後に、真実が明らかになるかというと……。 それは、最後まで絵をよーく見た人だけが分かるかも? あなたはこのミステリー、解けますか?
もちろん、そんなことはどうでもいいような、ほっこりエピソードも、この作品の魅力です。
作者の出口かずみさんは『ポテトむらのコロッケまつり』や『たくはいびーん』などで、軽妙で独特な世界観を描き出してきました。 その集大成のような、本作品。 お子さんと一緒に、「うろおぼえ」チャレンジを楽しんでみてください。
(中村康子 子どもの本コーディネーター)
お父さんにお母さん、お兄さんに弟、妹。揃いも揃って<うろおぼえ>が多いあひるの一家は、ある日、お母さんから買い物を頼まれて出かけたけれど、何から何までうろおぼえ。道中ヒントをもらいながら、はてさてどんな結末に?
編集者コメント 「うろおぼえ一家」のみんなは、いつだって真剣そのもの。決して、おちゃらけているわけでもふざけているわけでもないのですが、その一挙手一投足は、ほがらかな笑いを誘います。けれどいつの間にか大声で応援したくなって、しまいには一員になりたいと願ってしまう、そんな不思議で愛しい存在です。間違ったっていいじゃないか! 道を外したっていいじゃないか! とかく窮屈な世の中に、ユニークでユーモラスな風が吹き抜けます。
「なんだったっけ?」「しかくいものだったようなー、、、」と、かすかに残る記憶を元に、突拍子もない思い付きで「そうだったそうだった!」とワイワイお買い物をして回るうろおぼえ一家。
お目当てのものには全くたどり着かなかったのに、お母さんも「これだったような気がするわ!ありがとう!」と戦利品たちをながめて嬉しそう。
「えー!全然違うよー!!」と大笑いしながら、次々現れるうろおぼえストーリーに子供たちも大喜びでした。
何かがちょっとでもズレていると「違う、そうじゃない」と叱られがちな昨今、大人でも「窮屈だなぁ」と思うことが多いのに、羨ましいぐらい誰も何も責めないこの世界観。素晴らしい。
思ってたのと違っても、ずっこけながらも「そうだったかな?」「こっちもいいかも?」と言いながら、柔軟な頭でブレイクスルーを生むのはこんな天才的にゆるい生き方かもしれないなぁと思いました。
冷え性のお母さんが、湯豆腐を前に温かい飲み物の入ったカップを片手に、他の家族がアイスを食べながら楽しそうに団らんする姿を幸せそうに眺めるシーンがとってもいいです。私もこんな風にゆるくて懐の広いお母さんでいたいなぁとちょっぴり憧れてしまいました。 (カオリンゴカモシレナイさん 40代・ママ 男の子9歳、男の子3歳)
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