うら通りに、傘の修理をしている小さな「かさや」がありました。 主人の若者は、山ほどの傘のなかに座って、毎日せっせと仕事をしていました。 ほそいほそい雨のふる日、かさやは、小さな女の子が垣根にもたれてぽつんと立っているのを見つけます。
「かさをもってないのかい」
かさやは女の子と、町へ傘にはる布を買いに行き、海や空の色に似た青い傘を作ってあげました。
その日から不思議なことが起こります。かさやのもとへ、町中の女の子から青い傘の注文が舞い込んだのです。大忙しになったかさやは――
教科書にも掲載されていた安房直子さんの名作童話『青い花』。 本書は、パステル画で描かれていた1983年刊行の絵本(岩崎書店刊)を、南塚直子さんが銅版画で全面的に描き直して出版されたものです。 銅版画で描き出される雨脚の線、鮮やかに画面に開く傘の美しいこと! 物語を包み込むような色彩に見入ってしまいます。 かさやが女の子とデパートでクリームソーダを飲むシーンも、ぜひ実際に手にとって眺めてほしい場面のひとつ。最高においしそうです……!
雨の日の少し切なく優しいファンタジー。 大切なことは何なのか、いつまでも心に残る物語です。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
かさやさんが雨の日に町を歩いていると、傘を差さずにぽつんと立っている女の子に出会います。その子に傘を作ってあげることになりますが…。 1983年に刊行された同作(岩崎書店刊)を南塚直子が銅版画で全面的に描き直した、教科書にも掲載された名作絵本。
梅雨になり、傘の表紙にひかれて読んでみました。ファンタジックなお話で、一気に物語のなかへとひきこまれました。幻想的で、少し切ない。読み終わっても、余韻が残ります。さらに、南塚直子さんの銅版画もとても素敵で、見入ってしまいました。今の季節、読むのにぴったりの絵本だと思います。 (あんじゅじゅさん 50代・その他の方 )
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