暗い海にぽつんと浮かぶ船で、たったひとり、エラは俯いています。船の帆はしぼみ、意志を持たない存在のように漂っています。そこへ、海中から声がします。「とまっていてはいけない、エラ。前にすすんでいかなければなりません」 エラは「どうやってすすめばいいの?」「どこへ向かえばいいの?」と聞きます。でも「それは自分で見つけなさい」声はささやきます……。
不安と恐ろしさで胸がいっぱいのエラの元に飛んできた白い鳥、イルカの群れ、クラゲたち。彼らはエラに、勇気を出すこと、波は静められないけど波に乗るやり方を覚えればいいと教えてくれます。そばにいる、道がわかるように照らしてあげるといいますーー。 生き物に寄り添われ、帆を広げ、いつしか自分の力で船をすすめていくエラ。そして未来がすぐそばにあり、実はみんなが向かっていて、エラはひとりぼっちではなかったと気づくのです。
これまで、亡くなった人への愛情や、人同士の支え合いなど、哲学的なテーマを美しい絵本に昇華させているブリッタ・テッケントラップさん。ドイツ・ハンブルグで生まれ、ロンドンでアートを学び、世界各国で親しまれる絵本を数多く描いています。
本書を6歳の息子に読んで聞かせたとき、この幻想的な絵本を分かち合える喜びの一方、内容は抽象的すぎるかとも感じました。でも息子は最後までじっと絵を見つめながら味わい、「また読みたい」と言うのです。子どもはきっと本能的に、人生を背負っていくこわさと、分かち合うことのパワーを知っているのでしょう。暗い海から、自然と多くの生き物と寄り添い、どこかの岸辺へたどり着く……。ブリッタ・テッケントラップさんからの希望に満ちたエールを、ひとりの子どもとして受け取ったのだろうと思える絵本体験でした。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
エラはひとりぼっち。小さなふねで真っ暗な海にうかんでいます。 おしよせる大きな波に すすむ勇気もなく、不安をつのらせるエラ。 そこへ、一羽の鳥が光をはこび、 イルカやクジラもやってきて、やさしくよりそい エラはいつのまにか自分の力ですすんでいました。 そしてその先にあったのは……。
海中にクラゲたちが漂う幻想的な絵や 次第に明るくなっていく空や海の光も美しく描かれ、 希望を感じさせてくれます。
ひとりぼっちじゃないよ、あきらめないで、と 未来へ歩む子どもたちにあたたかいエールを送り 静かに、やさしく支えてくれるような絵本です。
絵がとても美しくて幻想的なのに、話は抽象的で概念的です。
エラが乗ったヨットは、一人ぼっちで果てしない海の上です。
その不安感をイメージできてスタートする哲学世界のように思えました。
多くの導きや救いがあって、でも最後は自分の力で、同じ海をともにできる仲間たちと一緒に新世界に向かっていくのです。
孤独や無力感を感じている人を後押ししてくれる絵本だと思います。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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