アンパンマンが森の上を飛んでいると悲鳴が聞こえました。子馬みたいな「らんぼうや」が、みんなのことなんかお構いなしに力強く走り回っていたのです。 「いちばん強いのはおれだ」という「らんぼうや」。アンパンマンが「乱暴はやめろ!」と追いかけて尻尾をギュッと掴むと、さすがの「らんぼうや」も走り続けられずへとへとに……と思ったら、宿敵バイキンマンが現れて、アンパンマンの顔に水をぶしゅー! アンパンマンは顔が濡れると力が抜けてしまうのです。どうなっちゃうの!?
ちょっぴりタネあかしをするとアンパンマンから逃れた「らんぼうや」ですが、今度はバイキンマンに背中に乗られてクタクタに。一方、アンパンマンの弱点はもちろん仲間のみんなが助け合ってフォロー! 乱暴な「オーレ オレ オレ オレー」が後半はまるでサッカー応援歌みたい。ピンチからの鮮やかな展開ににっこり。さわやかな読後感です。
本書は「アンパンマンのおはなしたんけんシリーズ」5作目。もともと月刊保育絵本で発表されたやなせたかしさんの未市販化の作品を、当時のあとがき付きで刊行したものです。 改めて読むと、「らんぼうや」というキャラクターが意外と愛らしく描かれていることがわかります。そこには、子どものように活発で生命力の強い存在への、作者からのエールも込められているようです。
幼い子は世の中の理屈がまだわからない一方、無垢なエネルギーでいっぱい。絵本を一緒に楽しみながら「本当の強さ」と「乱暴」の違いを、親子で考えていけるといいですよね。そうそう、ヘディングシーンもあるので、サッカー好きなお子さんにもおすすめですよ!
(大和田佳世 絵本ナビライター)
森の暴れん坊・らんぼうや。その様子を見たばいきんまんに利用されてしまいます。顔が濡れてしまったアンパンマンは大ピンチ!月刊保育絵本で発表された未市販化の作品を、当時のあとがき付きでお届けします!
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