はたらきもののちいさなトガリネズミの1日は、毎朝6時の目覚まし時計からはじまります。朝ごはんははちみつビスケットを3枚、お気に入りのお皿で食べて、決まった時間に、決まった電車で、決まった仕事場にいき、きちんと仕事をはじめます。同僚の信頼も厚くて、ちょっとした会話も楽しげです。帰り道のお買い物もまた、ふわっといい香りが漂ってきそうで……。
本書はボローニャ・ラガツィ賞優秀賞、NY公共図書館絵本賞など、国内外でいくつもの絵本賞を多数受賞しているみやこしあきこさんのはじめての絵童話。「トガリネズミのいちにち」「トガリネズミのあこがれ」「トガリネズミのともだち」の3つのお話が入っています。静謐で、ささやかな楽しみとおかしみの漂う、やさしい日常の空気感に満ちています。
冒頭でまずトガリネズミのかわいいあくびに心を掴まれるし、まじめな仕事ぶりには好感しかないし、おまけに首に巻いているチェック柄のえりまきがまたおしゃれでたまらないのですが、なんと2番目のお話ではえりまきを手放してしまうんですね。トレードマークかと思ったのに、いったい、なぜ!? 気になる方、ぜひ本をお読みください!
みやこしさんが今回水彩と木炭で描いたという陰影のある美しい絵は、今作も期待を裏切りません。 親しみさえ感じる温かい闇の色、モノクロのタッチの美しさはもちろん、晴れた日にトガリネズミが仕事場まで歩くひらけた道や、トガリネズミのつぶらな目に思いがけずうつった美しい景色など、カラーページのはっとするほどの透明感も見どころです。
みやこしさんは10年ほど前、南ドイツの友人を訪ねたとき、散歩中に森でトガリネズミを見かけたそう。その繊細で美しい毛並みが忘れられなかったそうです。本書は、そんな繊細な毛並みのちいさな生きものの愛らしさが、まさにぎゅっと詰まった作品! そばに置いてときどきページをめくりたくなります。たとえば、夜寝る前、明日のいい1日を願って子どもと本を開くひとときにも、ぴったりの絵童話です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞、ニューヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞などを受賞し、海外からも高い評価を受けている絵本作家が初めて手がける絵童話!
トガリネズミは働きもの。朝おきてから夜ねるまで、毎日きまった予定をこなし、つつがなく暮らしています。でも今日はひとつだけ、いつもと違うことがありました! ひとめ見たら忘れられない、つぶらな瞳のトガリネズミ。そのささやかでありふれた日常を、独特のおかしみをもって描きます。
ちいさなトガリネズミの、ささやかな、誠実な、地道な暮らし…。なんともいえず癒やされます。絵が、いいのです。大人はもちろんだと思いますが、小さい子もよく聞く『ぱんやのくまさん』シリーズのような感じなので、小さい子も喜ぶかもしれないですね。 (ピンピンさん 30代・ママ 男の子8歳)
|