きつねは絵を描くのが大好きです。何かにすごい! と気持ちが動いたら、勢い良くどんどん描いていきます。けれども、絵を見たやまねこから「ほんものとは ずいぶん ちがうな、へんなのー。」と言われたり、あひるからも「もっと きちんと いろを ぬらなくては だめですよ。」と言われてから、急に周りの目が気になるようになってしまいます。
そんな中、展覧会に絵を出品することになったきつね。みんなを見返したくて、「すごい絵」を描いてやるぞ! と意気込みますが、描いても描いてもこんな絵じゃだめなんじゃないか、もっとすごいものを描かなくちゃと焦ってばかり。描けば描くほど楽しくなくなってきて、みんなにどう思われるかばかり心配になって、とうとうきつねは絵を描けなくなってしまいました。 その後、ためいきをついてばかりのきつねでしたが、てつぼうができずにからかわれている友だちのうさぎとのやりとりを通して、大切なことを思い出していきます。 そして展覧会の日がやってきて……。
自分の好きなこと、やりたいことに対してただ気持ち良くやればいいのに、つい周りの目が気になってしまうこと、子どもたちにもきっとたくさんあることでしょう。なかなか自信が持てなくて、周りの意見が気になってしまうきつねの姿に共感する子も多いのでは? きつねの姿と友だちのうさぎのやりとりを通して、とても大切なメッセージが伝わってきます。
絵本から童話、紙芝居まで、子どもたちの心の動きを丁寧に綴った作品をたくさん生み出されている礒みゆきさんが描くとっておきのおはなしは、うさぎが登場するあたりからの展開に驚きがいくつも隠されていて、何度もハッとさせられると同時に、温かい気持ちが充満してきます。はたこうしろうさんが描く、きつねの表情や動きも生き生きとして、なんて魅力的なのでしょう。さらに、きつねが描いた絵もおはなしの中で見ることができるのですが、その絵もとっても素敵なんです。
「かきたいから かく。かきたいものを かく。」 きつねが自分に向けてつぶやくこのセリフは、絵のことだけでなく、いろいろなことに共通する大切なこと。小学1、2年生向きのおはなしではありますが、小学生全員に伝えてあげたいメッセージが詰まっています。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
絵を描くのが大好きな、きつね。上手下手なんて考えもせず、夢中で絵を描いていました。あるとき、先生がきつねに展覧会に絵を出品するように勧めました。きつねは「みんながおどろくような、すごい絵を描く!」と意気込みます。だけど、なにを描いてもすごい絵なのかどうかわからず不安ばかりが募ります。あんなに絵を描くのが楽しかったのに、いまはちっとも楽しくないのです。とうとうきつねは絵を描けなくなって……。
人に認められることは、自信を持つことにつながります。だけれど、認められることばかりに気を取られてしまうと、人の目を気にして、自分自身の気持ちや考えをどこかに置き忘れてしまうこともあるものです。 きつねも、そうでした。ただただ、描きたいものを描きたいように描くことが大好きだったのに、みんなに「すごい絵」と、思わせたいという気持ちが強くなると、描いても描いても満足できず、描いても描いてもこれではいけないような気持になっていました。 そして、だんだん、描くことが苦しくなってしまうのです。
この物語は、子どもたちに、あなたはあなたのままでいい、と語りかけます。 人の目を気にしないで、やりたいことと、やりたいようにしていいのだ、と。 そのままのあなたが、すばらしいのだ、と。
絵を描くのが好きなキツネをめぐる
自己肯定感にまつわるお話でした。
誰に何と言われようと
自分が「これが好き」と思えることを
自分の思うままに実行する。
一見簡単そうに見えて
外野の雑音とか聞こえてきちゃうと
揺れちゃうんですよね・・。
キツネの心情を思うと
よみながら何度も
「わかるわかる」とうなずいてしまいました。
読み終えた後は
なぜか、バカボンのパパの
「これでいいのだ!」という決め台詞が聞こえたような気がしました。 (やこちんさん 50代・ママ 女の子18歳)
|