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おばさんの家に招待された少女メリーは、大切な物をトランクに詰め込んで出かけましたが、一番大切な人形のビルを入れ忘れてしまいます。涙に暮れるビルでしたが、その後あきらめずに立ち上がり、メリーの乗る列車のあとを走って走って・・・。 絵も言葉もテンポがよく、気づけばお話の中に引き込まれています。半世紀以上も子どもたちに愛されてきた古典的絵本。
ウィリアム・ニコルソンの1926年の作品。
彼は、実娘のメリーのためにこの作品と、「ふたごの海賊」の2作を描いています。
特に、この作品は、イギリスの絵本史上、歴史的価値ある作品として位置付けられているとのこと。
表紙を見て、バートンの作品かなと思って手に取ったのですが、確かに、この作風は多くの絵本作家に影響を与えたのは間違いないでしょう。
既に、一世紀も前の作品となろうというのに、決して色褪せたものではありません。
物語は、主人公のエミリーが、おばさんから招待の手紙を貰うシーンから始まります。
それからが大変。
持っていく荷物を纏めるのですが、あれやこれやで、トランクに収まりきりません。
こうした行動って、子供にはありますよね。
特に良いのは、登場するおもちゃのリアリティ。
メリーが所有していた実物を描いたとのことなので納得です。
そこで登場するのが、近衛兵の人形のビル。
トランクに入れ忘れられてしまい、泣き伏してしまうのです。
それからのスピード感のある展開が、この絵本の一番の見所でしょう。
擬人化した人形と人間とのやり取りには、やはり惹きつけられてしまいました。
人形と人形の関係を、実に丁寧に描いているのに好感が持てます。
古典作品で、良い味わいを醸し出している作品です。
絵本を考える上でも、貴重な一冊と言えそうです。 (ジュンイチさん 40代・パパ 男の子12歳、男の子6歳)
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