「魂の近親者」であった作家と作品への共感
ジャン・ジャック=ルソー、ローベルト・ヴァルザーなど、ゼーバルトが偏愛した作家・作品と人生を振り返る。彼らは時代の波に乗らなかった「脇役」であった。そして、「幸福」とは言えなかった人生を送り、書くことを止められなかった作家たちであった。 19世紀から20世紀にかけて、急速に変貌を遂げていく近代社会、資本主義、そしてナショナリズムへの傾斜を背景にしながら、そうした趨勢と思潮に背を向け、逃避し、孤独で病的な作家たちの生涯が、ゼーバルトならではの独自な視点から取りあげられた逸話を交え、いつものように印象深い図版を豊富に織り交ぜながら綴られる。彼らが一見小さな領域に引きこもっているかに見えて、むしろ誰よりも「時代の災厄」を感知し、それぞれが言葉で相対していたことが、ゼーバルト流の息の長い密度の濃い文体で明かされる。時空を越えた連想や脱線から時代が捉えられ、歴史を越えて、生きる苦悩のごとき普遍的な生々しさが浮かび上がり、心を強く打つ。 ゼーバルトの歴史へのまなざし、近代に対する鋭い批評性を改めて認識させられる作品集。カラー口絵6点収録。
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