植物と人間の生活は切っても切れません。日常生活でも身の回りには多くの植物が生きています。室内に観葉植物を置いたり、公園で樹木を見たり、山に登って珍しい植物に触れたりする人も多いでしょう。さらに、食物として、身の回りの飾りとして、薬草として、宗教儀式や年間行事に関連して、嗜好品として、さらには麻薬になるものまで、植物は私たちの生活や人生に深く、強く結びついた存在です。
そうした植物について、世界の7つの大陸、55カ国を旅しながら、ときには美しかったり、ときどき危険で、意外にも毒をも含みながら、しかし巧妙に生きる80の植物が織り成す奇妙で不思議な世界へ誘います。本書の構成はヴェルヌの『八十日間世界一周』になぞらえて、イギリスから中東、インド、中国、日本、アメリカをまわって八十日間を80種に置き換えた世界の植物をめぐる旅にもなっています。
植物は私たちだけでなく、動物や昆虫、さらには他の植物を利用しつつ繁殖をしています。それらに恩恵を与えつつ、みずからも生き抜く戦略を生みだしているのです。ミツバチを欺いて花と交尾させようとするラン、堕胎のために使われたオウコチョウ、死後の楽園アアルへ送るカミガヤツリの舟、パイナップルの発見による貴族たちの異常な執着と熱狂、ジャガイモによる社会の変化とそれへの依存の大きさに反して種としての脆弱さがもたらす危険性、マレーシアの「世界最大の花」ラフレシア、世界最大の草といわれるマダケなど、この本を読めば、植物への興味が大きく膨らみ、植物をこれまでと同じように見ることはできなくなります。好評を得た前作『世界の樹木をめぐる80の物語』の続編として、今回も素晴らしい細密なイラストとともに世界の植物と私たちの知られざる関わり合いを描き出します。
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