万太郎没後60年を前に すべての演劇関係者に贈る
「軽妙」の底に漂う「あはれ」、それは「会話」で醸し出されるのか? 沈黙が複雑な感情を照らし、ト書きが時空間の奥行きをつくる。
戯曲は小説、詩歌、批評と並ぶ文学の主要ジャンルであると同時に、俳優、劇場、観客といった演劇の基本的な構成要素である。戯曲の言葉は〈読まれる〉とともに〈話される〉ことを前提としている点で、常に生きた人間の身体性に迫るベクトルを内包しており、演出、脚色、装置、照明、効果、音楽といった要素が加わることで総合芸術としての解釈を可能にする。しかし、戯曲を研究対象にする場合、私たちは無機質な活字に托された言語表現を読み解く以外にその劇的世界を享受する術をもたない。 本書は、万太郎が自身の創作世界をどのように構築していったのか、小山内薫らと始めた〈古劇研究会〉、小説と戯曲を溶解させたかのようなト書き、草創期のNHKラジオ・ドラマに深く関わったことなど、万太郎の戯曲世界を多面的・分析的に読み解いていくものである。
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