これまでにたくさんの作品を生み出してきた木下牧子によるア・カペラ男声合唱の小品集。東京大学音楽部合唱団コールアカデミーの創立百周年記念として委嘱され、コロナによる1年の延期を経て、2021年12月25日(牛込箪笥区民ホール)、第67回定期演奏会(指揮:渡辺穂)にて初演された。第一次世界大戦、第二次世界大戦を経験し、戦後にかけて活躍したドイツ文学を代表するヘルマン・ヘッセの詩が島途健一(日本ヘルマン・ヘッセ友の会/研究会)の訳によって歌われる。南ドイツの風物のなかで、穏やかな人間の生き方を描いた詩は、人々の感受性を刺激する。木下牧子によって耳馴染みの良い旋律と豊かなハーモニーが描かれ、ヘッセの深い精神世界に共感できる作品が出来上がった。一部の曲でカウンターテナーパートやファルセットの音域が印象的に登場し、男声合唱ならではの広い音域で、しなやかさと勇敢さが存分に表現される。
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