夜空に輝く2つのお宮で、向かい合わせで銀笛を吹いている、チュンセ童子とポウセ童子という2つの星のおはなしを描いた絵本です。
1つ目は、空の泉で大がらすの星と大サソリの星が、ケンカで互いに大ケガを負わせ、チュンセ童子とポウセ童子が助けようとするおはなし。カラスのくちばしはサソリの頭をひどく傷つけ、サソリの毒はカラスを瀕死にして、童子は自らの口で毒を吸ったり、身を挺してサソリを抱えていこうとします。それを空の王様は見ていて、ふたりの童子に手を差し伸べてくださる……というおはなしです。
2つ目は、嫌われ者・暴れ者のほうき星が、チュンセ童子とポウセ童子をだまして、お宮から旅に連れ出し、わざと海に振り落としてしまうおはなし。海の底で、「罪を犯して落ちてきたのだろう」とヒトデたちに責められますが、2人の童子はつつましく、海に落ちた運命を受け入れようとします。でもやはり海蛇や海の王様のはからいで、無事に空のお宮に戻ることができるのです。
宮沢賢治の物語世界を、個性豊かな現代の画家たちが絵本にしていく「宮沢賢治の絵本シリーズ」第40弾。今作で平澤朋子さんは、童子たちの無垢な銀色のきらめきと、プライドの高い大カラスと大サソリや、ほうき星の素朴な悪意のこわさの対比を、思い切って描き出しています。
読み聞かせの絵本としてはそれなりの長さですが、わが家の7歳の息子に読んで聞かせると、驚くほど集中して最後まで聞いていました。聖なるものと、不条理でまがまがしいもの、その両方の存在を、幼い子でも薄々感じるのかもしれません。チュンセ童子とポウセ童子の愛らしさか、子どもを引きつける不思議な魅力がある『双子の星』。賢治童話初期の傑作のひとつを、ぜひ一度手にとってみてください。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
大人気の「宮沢賢治の絵本シリーズ」第40弾!イーハトーブの星空から生まれた、天空から海底までを駆け巡る賢治童話初期の傑作!
作品ごとに異なる絵本作家の方が絵を描く「宮沢賢治の絵本シリーズ」。今度はどのお話だろう。誰が絵を手がけるんだろう。と宮沢賢治好きの私は、毎回楽しみにしています。
双子の星は、美しい天上の世界と恐ろしい下界とのコントラストが肝になるお話だと思います。迫力のある蠍や箒星の絵は、イメージにピッタリ合っていました。 (miki222さん 40代・ママ 男の子12歳、女の子10歳)
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