中国の心あたたまる絵本を『食堂かたつむり』『ツバキ文具店』の小川糸が翻訳。
「だいじょうぶ。あなたのことを、わすれたりするもんですか」
いまはもう、いろいろなことを忘れてしまったやさしいおばあちゃん。 けれども、わたしは、おばあちゃんとトウモロコシをとりに行った、あの日をわすれない。
祖母を慕う少女の気持ち、孫を思う祖母の気持ち。国をこえて、人間はみな同じです。
大好きだった祖母、そして、今では認知症ですべてのことを忘れてしまった祖母との思い出をファンタジックに描いたこの作品で、イラストレーターの早秋丸さんは新人賞を受賞し、絵本作家デビューしました。
夏のトウモロコシ畑の上に広がる青い空。 少女と祖母の上を飛んでいく幻想的なチョウたち。 畑から二人で帰る道をつつむ、いなか町の夕暮れの色。
何度もページをめくりたくなる美しい絵に、中国でも人気の作家・小川糸さんが美しい日本語訳をつけてお届けします。
*中国接力出版社と講談社の交流30周年記念企画 *ひとりで読むなら小学校低学年から
この『トウモロコシのおもいで』という絵本の作者名をみて、
どこの国の絵本か、わかったでしょうか。
早秋丸。すべて漢字の、早秋と丸の間にすこしスペースがあるから、姓と名?
日本の絵本? でも、作家の小川糸さんが訳とあるから、日本ではないな。
だとしたら・・・、そう、この絵本は中国の絵本です。
早丸 秋はザオチウ ワンと読みます。
この絵本が絵本デビュー作となるそうです。
中国の、これは田舎のお話。
一面みどり色の田んぼや畑ばかりのところで、
おばあちゃんとその孫娘の、楽しいトウモロコシとりの思い出。
虫を見つけたり、トウモロコシの葉で腕が傷ついたり、
おばあちゃんがトウモロコシをもぎとる音がしたり、
おんなの子には忘れられないことばかり。
でも、おばあちゃんは年をとって、どんどん忘れることが増えています。
あの日、先を行くおばあちゃんがおんなの子を振り返って、
「あなたのことを、わすれたりするものですか」と、言ってくれたのに。
どこの国の人であっても、誰もが年老いて、美しい思い出さえも忘れていくことがあります。
でも、その人のことを覚えていてくれる人がいるかぎり、
その人と過ごした美しい思い出は消えません。
国は違えども、人のそんな思いは違わないのでしょう。
中国の、美しい絵本にそんなことを教えてもらいました。
(夏の雨さん 60代・パパ )
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