フェリシモ出版の「おはなしのたからばこ」シリーズ28巻は、 女の子の心の成長を象徴的に描いた創作絵本『しいちゃん』。
「自分がもう一人いたらいいのに。 いつでも話ができるし一緒に遊べるもの。」 そう思っていた、さみしがりやのしいちゃんのもとに、 春になると不思議なおばさんがやってきます。 魔女みたいな真っ黒の服に、マスクをして、 マーブルチョコなんか持っていて。 でも、ふしぎに分かり合えるそのおばさんを、 「もう一人の自分みたい」と感じ始めるしいちゃん。 夏、秋、冬が過ぎて春になると、またおばさんはやってきます。 そして、しいちゃんが17歳になった春…。
歌手である友部正人さんの創作されたお話は、まるで歌詞のように象徴的で不思議な空気感。 音楽がつくとしたらどんなメロディーなのでしょう。 おばさんのような存在が、自分にもいたのではないかしらと、 ふと振り返るのも読んだあとの楽しみのひとつ。 イラストは、沢野ひとしさん。透明感ある淡い黄色やピンクの色合いが、 美しく、アンニュイなタッチがお話の空気感にぴったりです。 肩の力を抜き、自由に想像をふくらませてお楽しみください。
(長安さほ 編集者・ライター)
周囲になじめなくて、もうひとりの自分がいたらいいのに、と思っている女の子。そんな“しいちゃん”が もうひとりの自分に会ったかのように、心安く、言葉少なに一緒にいられたのは、ちょっと風変わりなおばさんでした……。 親でも先生でもない、たまにしか会わない大人と過ごす濃密で静かな時間。それがあったからこそ、 大きくなるにつれて、一歩ずつ自分の世界を広げていくことが出来た少女の成長を、淡々としたやさしい風景の中で 繊細に描いた絵本。少し不思議なシーンが印象的で、幼い時の震えるような心持ちを懐かしく思い起こさせてくれます。 独特の詩世界を持つ歌手・友部正人とコアな人気の画文家・沢野ひとしの夢のようなコラボレーション絵本。
SFや、パラレルワールドに通じるような物語で、こういったおはなしを絵本で読む体験は、とても新鮮だと感じました。
ラストの数ページにどきどきし、最後は、ふしぎと穏やかな気持ちで読んでおりました。
おばさんのいない夏、という文章が、きれいで寂しくて、好きだなと感じました。 (なーお00さん 30代・その他の方 )
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