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神社で大凶のおみくじをひいて以来,やることなすことうまくいかない青年。彼の不運の原因は? 表題作を含む全9編の短編集。
『星新一ちょっと長めのショートショート4』(理論社)。
表題作である「とんとん拍子」をはじめとして、9篇の「ちょっと長めのショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品に挿絵がついています)は、和田誠さん。
『ショートショートセレクション』シリーズの場合、ひとつのお話に一枚の和田誠さんの挿絵でしたが、このシリーズでは2枚あったりして、こちらも「ちょっと多め」。
表題作の「とんとん拍子」が面白い。
ある日青年は神社で<大凶>のみくじを引いてしまう。そこから。次々とおこる良くないこと。ついには、死期がせまる病にもかかってしまう。
実は青年はみくじを引く前に腕時計を拾っていて、その腕時計は何事もうまくいくという画期的な発明品だった。ところが、間違って配線が逆になった腕時計を青年が拾ったので悪事が続いたというわけ。あらためて配線を正しくしてもらうと、病も癒えるし、何事もうまく行くことばかり。まさに「とんとん拍子」。
この「とんとん拍子」を辞書で調べると、「物事がはやく思うようにはかどるさま」とあるから、いい言葉ではある。それを逆手にした物語の出だしは、さすがに星新一らしい。
もっとも、この青年、最後はそう「とんとん」とはいきませんが。
その他、強烈な媚薬を製造したせいでいろんなものに恋されてしまう男を描いた「ほれられた男」や西部を舞台にした男ふたりの奇妙なやりとりがおかしい「西部に生きる男」など、楽しい読書の時間を過ごせるはず。 (夏の雨さん 60代・パパ )
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