パトリシアは、特別な場所をめざしてバスに乗りました。でも、「黒人指定席」にしか座れません。 公園のベンチは「白人専用」、レストランは「白人のお客さま以外お断り」です。 やっとたどりついた特別な場所、そこは――。パトリシアが見上げた石板にはこう書いてありました。 「公共図書館・だれでも自由にお入りください」
「ローザ」と相通ずる作品です。
1950年代アメリカ南部の人種差別の実態が、差別された側の少女(主人公は作者)の目から語られています。
お話の舞台は、テネシー州ナッシュビル。
当時は、ホテル・レストラン・教会・遊園地には、ジム・クロー法という法律によって、人種を差別する看板が出され、アフリカ系アメリカ人を排除していました。
さらに、「ローザ」と同様バスの座席は後方、人種分離の学校へ通わされたり、劇場でも後部座席ををあてがわれたり、公園の水飲み場も別などという侮辱を多々受けていました。
こういう状況下で、アフリカ系アメリカ人は子どもたちを守るため、12歳までは一人で外の社会に出させませんでした。
主人公パトリシアは、12歳になり初めて一人で今日外へ出かけます。
目的地は、パトリシアにとって「特別な場所」。
さて、それはどこなのだろう?と読み進めていくと、次々と現れる人種差別の現実。
こうまで徹底した差別を受けていたのかと、憤りと悲しみが湧いてきます。
どんな状況でも、乗り越えられるだけの愛と尊敬と自尊心を身につけていたパトリシアは、負けませんでした。
そして、目的地を仰ぎ見るパトリシアの希望に溢れたまなざしの中に真の力強さが伝わってきました。
あとがきを読み、1950年代後半、ナッシュビル公共図書館運営委員会の議決事項に、感心しました。
「知る」権利とうい基本的人権の一つが、この町で認められたと言うことの事態の大きさを感じます。
パトリシアのおばあちゃんの「図書館は、・・・・よりも刺激的で面白く、たくさんのことをおしえてくれる」という言葉と、作者が、祖母やアンドリュー・カーネギーと共に「読書は自由への入り口」であると信じているという言葉に深く感銘を受けました。 (アダム&デヴさん 50代・ママ 男の子12歳)
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