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病気で歩けなくなったぼくのところに、小さな不思議なおじさんがやってきて言った。「夕あかりの国へ行きたくないかね」ぼくたちは一緒に空を飛んで不思議な世界へ…。「長くつ下のピッピ」等で著名なスウェーデンの児童文学作家と、同国の人気画家が贈る、心癒される美しい絵本です。
『長くつしたのピッピ』で有名なリンドグレーンは、荒唐無稽な話や、スウェーデンの子ども達の日常を丁寧に描いた話が有名ですが、ファンタジー作家としても卓越しています。
リンドグレーンの描くファンタジーは、弱いものに対する視線がとても優しくて、悲しい結末だったとしても必ず読者が納得できるだけの救いがあるのです。そしてなんといってもお話自体がとても美しいのです。
このお話も、現実の世界ではもう一生歩けない少年が、夕あかりの国では何でもできて、それが「あたりまえのこと」なのです。
少年は「一生歩けない」という現実から逃れることは出来ませんが、夕あかりの国というもう一つの世界を持つことによって「なんでもできる」という開放感と自由を得ることができたのです。
苦しい現実から空想の世界に逃げるのではなく、しっかり地に足をつけたファンタジーです。現実をきちんと踏まえているからこそ、ファンタジーとしての輝きがある絵本です。 (金のりんごさん 40代・ママ 女の子11歳、男の子8歳、男の子6歳)
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