「あかいボールをさがしています!」 子どもたちが大きな声を出しながら手作りのちらしをくばっています。いったい何事? これは実在している保育施設「りんごの木」を舞台にしたお話だそうです。卒園を間近に控えたある日、みんなの大事なあかいボールをなくしてしまったことから始まります。 ければけるだけ、サッカーがうまくなるボール。 「りんごの木」のみんながみんな、それぞれに思い入れのあるボール。 子どもたちは落ち込むだけではありません。話合いをして、どうしたら自分たちでボールを探し出すことができるのか考えるのです。そしてとうとう・・・! なくしたボールをみんなで探し出す、と聞けば何でもない出来事にも思えますが、実は「自分たちだけで考えて行動する」というのは子どもたちにとって、とてつもなく大きな冒険であり、事件なのではないでしょうか。泣きそうになって、でも考えて、誰かが提案をして。そして、賛成をしてみんなで実行する。その一つ一つの子どもたちの行動と表情をとても丁寧に描くことによって、読んでいる方にも気持ちが伝わり、最後の場面でのみんなの笑顔に共感することができるのです。 子どもたちというのは、こんな風に考えながら自らで成長していく力を持っているんですよね。その背中を押せるような大人になれるように、大人も頑張らなくては・・・なんて思ってしまいました。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
実際にあったお話が絵本となりました
2010年度小学館「わたしの保育」大賞作品をもとにした絵本です。 絵本の舞台は、横浜に実在している保育施設「りんごの木」。この園では、問題が起きると、「ミーティング」と称して、子どもたちは徹底的その解決法を話し合います。 卒園を間近に控えたある日、赤いボールがなくなりました。 そのボールは大人とのサッカーの試合に勝った、とても大事なボールでした。 子どもたちはさっそくミーティングを行い、どうしたら赤いボールを探し出すことができるかを考えます。 警察に行く、町中にポスターを貼る、道行く人にチラシを配る、いろいろなアイデアが出てきます。子どもたちはそれらをすべて実践することになりました。 園から町へ繰り出す子どもたち。温かい大人もいれば、無関心な大人もいます。でも彼らは勇気を出して、ひとつひとつ作戦を遂行していきます。 しかし、何日経っても、赤いボールは見つかりません。 ついに明日は卒園式です。 あきらめて、町のポスターを一枚一枚はがしていたとき、ふと後ろから声がしました……。 作者は「りんごの木」の現役保育者。絵は第32回講談社絵本新人賞を受賞した実力派絵本作家です。
幼稚園児が、ここまで考えることができるなんて、、、うちの子が5歳のころと比べてしまいました。
大事なボールの価値観や、警察やコンビニなどの交渉など、よくわかっているなと感心しました。いろいろな大人がいることを知るのもいい経験です。
ふだんから徹底的にミーティングをさせることが、子どもたちを成長させているんですね。大人もじっくり、こどもに合わせなければ、と思いました。 (どくだみ茶さん 40代・ママ 女の子11歳、)
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