人生で自分の好きなことを仕事にする以上に、幸せなことがあるかい?
鍵盤をひとつずつ叩いて、まるで聴診器を当てるように、悪いところはないか、聞いてあげているのです。女の子はそれを仕事にしようと思いました。
デビー・ワインストックは、活発でがんばり屋さんの女の子です。彼女にとって、ピアノを調律する音は、もうそれだけで、他のどんな音楽よりも最高に美しい音でした。 デビーのおじいさんのルーベン・ワインストックは世界一のピアノ調律師です。仕事に厳しく、そしてデビーをとても愛している、素晴らしい人です。デビーはそんなおじいさんのような調律師になる決心をしました。
末盛千枝子さんより 尊敬する新聞記者が病床にあって、この本を受け取ったときの手紙の一節が、強く印象に残っています。「『人生で自分の好きなことを仕事にする以上に幸せなことはあるかい?』 このメッセージ、確かに受け取りました。」
末盛千枝子ブックスについて すえもりブックスを主宰し、国際児童図書評議会(IBBY)の国際理事としても活躍した名編集者・末盛千枝子さん。「末盛千枝子ブックス」では、末盛さんが新しく企画・編集する絵本や著作を刊行するほか、末盛さんがかつて手がけた名作の復刊にも取り組んでいきます。本書は復刊第一作目です。
【著者紹介】M・B・ゴフスタイン(ゴフスタイン,M.B.)
1940 年、アメリカ、ミネソタ州セントポール生まれ、ニューヨーク在住。大学で美術と小説、詩作を学ぶ。卒業後ニューヨークに移り画家として活動。その後、絵本の制作を始め、子どもたちや若い人に向けて、友情、自然、家族、仕事などをテーマに魅力的な作品を数多く発表。主な作品に、『ブルッキーのひつじ』、『作家』、『画家』、『生きとし生けるもの』、『わたしの船長さん』、『ゴールディのお人形』、『ピアノ調律師』、『おばあちゃんのはこぶね』、『ふたりの雪だるま』、『あなたのひとり旅』などがある。
本作の翻訳をした末盛千枝子さんの肩書は絵本編集者とされることが多い。
ただ編集者だけでなく、「すえもりブックス」という出版社を設立し、美智子皇后の講演録や良質の児童書などを刊行していたが、そこを閉鎖することになる。
しかし、新たに現代企画室という出版社が「末盛千枝子ブックス」を企画し、かつての名作ももた復刊している。
2012年に復刻版の第1作として、取り上げられたのが本書である。
この本の作者ゴフスタインはアメリカの絵本作家である。
この本のところどころに彼女の独特なタッチの絵もはさまっているが、絵本とはいいがたい。
童話とも少し雰囲気がちがう。
いうなら、これこそ児童書なのだろう。
そして、内容も素晴らしいが、文章はそれ以上にいい。
子どもたちが作文を書くことはよくあるが、何をどのように書いていいかわからない子どもも多いのではないだろうか。
そういう子どもにはぜひこの作品を読ませてあげたいものだ。
主人公のピアノ調律師のおじいさんルーベン・ワインストックとたった一人の孫むすめデビー。この二人の何でもない日常の、それでいて色彩にあふれた生活。おじいさんの思い、デビーの想い。
ある時、街に有名なピアニストがやってきて、デビーはおじいさんのようなピアノ調律師になりたいという夢を語る。
心配するおじいさんにピアニストは言う。
「人生で自分の好きなことを仕事にできる以上に幸せなことがあるかい?」
児童書にもこんな宝石のような言葉がはいっている。
それを読まないなんて、なんてもったいないことだろう。 (夏の雨さん 60代・パパ )
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