まっ白のつやつや炊きたてごはん。やっぱり美味しい。毎日食べるお米が田んぼから収穫されてることは知ってるけれど、一年の四季を通して、田んぼのまわりでこんなにもたくさんのドラマが起きてるなんて!
この絵本の特徴は、何と言ってもお米作りの1年が見開きまるまる使われて、1月から12月まで月ごとの稲作の様子とその生態系をパノラマビューでおさめられていること。まるで、ケーキの断面図のように、地上と地下が描かれている田んぼは、今までと全く違う姿を見せてくれています。例えば、寒い2月、稲作作業はお休み中。作業をしていない田んぼの傍らでは、水溜りにヤマアカガエルの卵塊があり、ドジョウやアメリカザリガニは土の中で眠り、鉛色の空を見上げるとヤマグワの枝からは蓑虫がぶら下がっていて、その隙間の空をコハクチョウが二羽優雅に飛んでいきます。ページをめくるたびに四季が巡り、田んぼが姿を変えていく様は日本の1年を旅しているような気持ちにさせてくれるのです。この絵本の田んぼに登場する生き物は、昆虫、お魚、鳥や草花を含めるとなんと190種類!巻末には、田んぼの作業やお米についての優しい解説のページや田んぼの言葉辞典、生き物インデックスなども付いています。
田んぼとそのまわりに住む生き物たちの営みを丁寧に愛情こめて描いた著者の向田智也さんは、NPO法人鎌倉広町の森市民協議会で、田んぼや畑、森での作業を通じて里地里山を復元する活動をされています。美しくスタイリッシュな絵と向田さんの経験で紡がれた田んぼの絵本。本物の田んぼを知らない子どもたち、大人たちに是非読んで体験してほしい1冊です。
(富田直美 絵本ナビ編集部)
身近な田んぼは、小さな命の宝庫
全体の構成は、パノラマ絵本+生き物図鑑+米と田の文化 です。 <パノラマ絵本>日本の田んぼを、1年間定点観測。各月の田んぼの作業や、まわりに出てくる生き物、そして携わる人たちのドラマが、ひとつのイラストの中に展開されます。 <生き物図鑑>パノラマ絵本の欄外に、田んぼの生物たちがテーマ別に登場します。身近な田んぼのまわりに、これだけ多くの生き物がいるということに、新鮮な驚きがあります。 <米と田の文化>お米のでき方、昔ながらの、田んぼでの仕事、しきたり、行事など、改めて知ることが出来ます。
今、地域のワークショップや、環境教育の一環として、こどもたちの稲作体験が注目されています。また、NPOで田んぼや自然を守る活動をしている著者によれば、そのような体験をするこどもたちは、必ずといっていいほど、田んぼのまわりの生き物の多さに驚き、喜び、夢中になるそうです。 この本は、田んぼの一年の仕事と、それぞれの時期に田んぼのまわりに現れる膨大な数の生き物を、紹介します。著者の自然に対する愛情と、あたたかいイラストは、田んぼの生き物と同じように、こどもたちをワクワクさせるにちがいありません。
(編集担当者からのおすすめ情報) 最近ではなかなか田んぼを見ること自体、少なくなりました。ましてや、田んぼで遊んでいる子どもたちなど、地方に行ったときでさえ、ほとんど見られません。私はこの本のイラストを見たとき、こどもの頃に近くの田んぼや畑に大人の目を盗んで入り込み(ホントはダメです!)、夢中になって虫集めをしていたことを思い出しました。今の子どもたちにも、そんなわくわく感を感じてほしいです。 また、昔ながらの田んぼでのしきたりは、今の時代にもさまざまな形となって残っていて、盆も正月も、元々は農耕儀礼から始まったそうです。そんなことを、かたくるしくなく、今の子どもたちに伝えるのも大事ですね。 この絵本は、間違いなく、両方の手助けとなってくれると思います。
うちの子どもにとっては、帰省した時にだけ見る田んぼ。
小学生になり、そろそろ田んぼのことを知ってほしいという思いで、この絵本を借りました。
1月から12月まで、ひと月ごとの田んぼと、周りの風景が素敵な絵で描かれています。
「お米のできるまで」だけでなく、田んぼの周りの人々の様子、虫や鳥なども丁寧に描かれているところが、とても良いです。
巻末には「田んぼの一年」の詳しい解説、田んぼの仕事カレンダー、お米の一年、田んぼの言葉辞典、田んぼの生き物インデックスが記され、大人にとっても読み応えがあります。
ぜひ購入して、季節ごとに何度も読みたいと思っています。 (solicaさん 30代・ママ 女の子6歳、女の子3歳)
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