「いつ たべれる?」「もう たべれる?」「もうすぐ たべれる?」 梅干しのできあがりを待ちきれないわたしは、何度も何度もおばあちゃんにたずねるのです。 そのたびにおばあちゃんは、「まだだよ、まだだよ」と言います。
おばあちゃんの作る梅干し。 梅の実が少し熟して黄色くなった頃、おばあちゃんは縁側で梅干しをつける準備をはじめます。 ぎゅっぎゅっぎゅと塩で梅をもみながら瓶につめ、少しおいてから、紫色のしその葉っぱに塩をまぶして、瓶の中の水を梅干し色に一瞬でそめていきます。梅雨明け、蝉の鳴き声が聞こえるようになったら、外に机を並べて「梅干しの土用干し」。梅干しを3日間、天日干ししたら、また瓶につめて秋、冬をずっと我慢してようやく春になったら梅干しが完成?!でも、おばあちゃんはわたしになかなか梅干しを食べさせてくれません。なぜなら、大切に大切に作った贅沢な梅干しを最高に美味しく感じられる食べ方と場所をおばあちゃんは知っているのです!
一年かけてゆっくりと梅干しをつくるおばあちゃんと孫のほほえましい様子を絵本にしたのは、児童文学作家の村上しいこさん。時間を短縮することばかりが優先されるこの時代に生きているからこそ、じっくりと時間をかけることの豊かさを大切にしてほしい、そんなメッセージがぎゅっとつまっています。素敵なハイカラおばあちゃんとその日常をほのぼのとした優しいタッチで描いた市居みかさんは、この作品を描くために絵本の完成を延ばしてもらい梅干し作りに挑戦したそうですよ。
梅干しをはやく作れるようになりたい!というわたしに、おばあちゃんは最後に一言。 「すぐだよ、すぐだよ。でもいいんだよ。ゆっくりで、いいんだよ。」
(富田直美 絵本ナビ編集部)
村上しいこのパワフルえほんシリーズ、第3弾! 今度は、一目ですっぱ〜くなる、“梅干し”をめぐるお話です。
毎年、縁側で梅干しを漬けるおばあちゃん。そのようすを、すぐそばにいる「わたし」がながめています。 「もう、たべられる?」「まだだよ、まだだよ」 ふたりのそんなかけあいと、めぐる季節の先に、とっておきのおいしいひとときが――。 今の時代、つい忘れがちな、待つことの楽しみを思い出させてくれます。
・村上しいこさんからのメッセージ
梅干しを作る工程で私が一番好きなのは土用干しです。 そして子どもたちにはぜひ、梅干しがしその葉で一瞬に変わるところを見てほしいです。 梅酢は煮魚にも使えて嬉しい。 それから、作り方についてですが、もし時間と場所にゆとりがあれば、買ってきた梅も黄色くなるまでかげ干ししたいですね。 そして食べ頃に関しても、ひと冬こすまえに、秋頃一度、食べてみて下さい。とってもフルーティーで、さわやかな梅干しが楽しめます。
・絵/市居みかさんからのメッセージ
梅干しづくりの絵本。やっぱり自分で作らないと絵は描けないなぁ。でも……。10年ほど前に梅干し作りに初挑戦、見事にカビを生やしてしまい、ああショック。それ以来、「梅干し=難しい」とずっと敬遠していたのです。 絵本の完成を無理に延ばしてもらい、おそるおそる再挑戦。今度は焼酎での消毒を丁寧にしたせいかカビもはえず、無事に完成。ちゃんと梅干しになってる! なんだか、このおばあちゃんに助けてもらったような気持ちになりました。じっくりゆっくりできていく梅干し、ほんとにおいしい!
「おばあちゃん、なにしてるの?」
「おいしい梅干し、つけるのさ。おまえも一緒に、手伝って」
おばあちゃんと一緒に梅干しづくり。
早く食べたい孫娘におばあちゃんは繰り返します。
「まだだよ、まだだよ」
梅干しはいつになったら食べられるのでしょうか?
おにぎりといえば、梅干し命な私(笑)
でも恥ずかしながら、梅干しができるまでの詳しい工程は知りませんでした。
もちろん、作ったこともナシ。
その理由というのは、『手間がかかって、難しそう』だから。
この絵本を読んで、梅干しがどうやってできるのか、どうしてあんなにおいしいのかがわかる気がしました。
やっぱり、手間をかければこそ!なんですよね。
おばあちゃんが梅干し入りのおにぎりを食べながら言った言葉。
「すぐだよ、すぐだよ。でも、いいんだよ。ゆっくりで、いいんだよ」
それを聞いて、なんだか胸が暖かくなりました。
おばあちゃんの言葉に後押しされて、今年は手作り梅干し、挑戦してみようかな!? (ひだまり☆ははさん 30代・ママ 男の子13歳、女の子9歳)
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