美しい表紙が印象的ですが
戦争のお話に分類されると思います。
若者(男性)は、徴兵検査を受けて、みな兵隊になり、戦争に行く時代に
子供の頃のけがが原因で足が不自由になり、兵隊になれなかった若者が主人公です。
「兵隊になれなかった」ということが、世間への負い目となり
苦労が多い灯台守の仕事を選ぶことになったといういきさつが
とても時代を映していると思いました。
そんな灯台守のところに、助けたかもめが、女人になってお嫁に来ます。
かもめの嫁は、
一日に一回かもめの姿になり、翼を広げて空を飛ばなければ死んでしまうという身の上で、
なおかつ、その姿を見てしまうと、視線が刃になり
かもめを傷つけてしまうということ。
戦争が迫る中、灯台にも兵隊がつめるようになり
なかなかかもめに戻れなくなった嫁・・。
そして、なんとかかもめに戻る時間を作る灯台守に
「鳥を飛ばして、敵に連絡している」というスパイ容疑までかけられてしまいます。
もう・・・灯台守夫婦に感情移入してしまって
兵隊に腹が立ってしかたない展開でしたが
翻って、そんな時代だったのだ・・とも感じました。
物悲しい結末は
何気ない日常さえも奪われる戦争に対しての、静かな抗議のようにも思いました。