「いっこ」「さんこ」とページをめくるたびにはっきりとした色調のものが次々にでてくる。「いっこ」「さんこ」の言葉が、テレビも音楽も消した部屋の静けさの空間に重みを持って繰り返される。息子の心にその音は響いたようで次々に現れるものに見入っていた。1回目は私が読み、「もう一回」といって2回目も読もうとしたら、「僕が読む」と言い、2回目は私がページをめくり、息子が読んでくれた。読みながらかわいいもみじのような手を一生懸命いっこにしたり、さんこにしていた。気付けば今度は私が息子の声に耳を澄まし、絵ともみじのような手に見入っていた。本の世界を息子と共有する貴重な時間だった。
読み終わってテーブルにあったみかんを横に三つ並べたり、縦に三つ積み上げてはぐらぐら落ちたりと、「いっこ」「さんこ」の本の世界を再現して遊んでいた。本の中の世界を目の前に現実として創る楽しさを息子が発見した一冊だった。