少し不気味さも感じさせる深い深い大人の絵本。
極めて哲学的な趣を感じます。
人里離れた山奥に住む敬虔な隠者と仲間から追われて孤独に生きる盗賊が出会い、盗賊は隠者の弟子となります。
恋人に結婚直前に出奔され、自分の出自に原罪を悟った末、世捨て人ととして哲学書をあさった上で流浪の旅の挙句に隠者となった男、恋人を辱めた相手を怒りのあまりに殺したことから社会の逸脱者となった男、ともに道さえ違わねば隠者とも悪人ともならなかったのでしょう。
二人の行きついたところは、魂を救済されたいという自己昇華の世界。
書物で読んだならば難解なお話ではありますが、エンデは多少判りやすくまとめているのと、シュレーダーの絵によって近寄り難さを食い止めている作品です。
盗賊が師の言いつけを守らずに見たものと、隠者の言葉に物語としての奥深さを感じました。