いまが一番寒さの厳しい季節。
富安風生という俳人が詠んだ句に「大寒と敵(かたき)のごとく対(むか)ひたり」というのがあって、なるほどうまいことをいうと感心しました。
朝、ぐんと冷えた道を歩いて会社や学校に向かう時などは、まさにこんな気分ではないでしょうか。
都会ではめったにありませんが、北の雪国では寒さ以上に雪の道を行くこともあって、その大変さに頭がさがります。
いわむらかずおさんの人気シリーズ「14ひき」のこの巻、『14ひきのさむいふゆ』もねずみたちの住む森をまう雪の場面から始まっています。
かれらの家も半分以上雪でおおわれています。
でも、窓からなんだか暖かそうな明かりがもれています。
14ひきの家族たちの家の中はストーブがあってとてもあたたかいのです。いわむらさんは家の中をとってもあたたかない色で描いています。
雪に閉じ込められて退屈しているかと思いきや、なんだかねずみたちはとっても忙しそうです。
おじいさんはのこぎりを使って何を作っているのでしょう。
おとうさんはハサミで工作をしています。
おばあさんが手でまるめているのは、おいしそうなおまんじゅうです。
ほっかほっかにふくらんだおまんじゅうを食べながら、おとうさんがこしらえたゲームに夢中になる14ひきたち。
寒さもわすれるくらい、あったかい家です。
そうこうしているうちに雪もやんで、ねずみたちは外にでます。おじいさんが作ったそりをひっぱって。ここからいわむらさんは白を基調にした明るい絵を描きます。
そりあそびに夢中になるねずみたち。すると、たちまち「せなか ほかほか、はなのさき つんつん」。
この「はなのさき つんつん」という表現のうまいこと。
実際に寒さが厳しい時に、鼻の先を触ると、そこはとても冷たくて「つんつん」していることがあります。
いわむらさんの「14ひき」シリーズの人気が高いのは、そういうきちんとした言葉の使い方にも理由があるように思うのです。