絵本作家あべ弘士さんは、以前北海道旭川にある旭山動物園で飼育員として20年以上働いていた経歴を持っています。
あべさんの名前を一躍有名にしたのは、
オオカミとヤギとの交流を描いた木村裕一さんの『あらしのよるに』という作品の絵を描いた時で、
動物園の飼育員としての経験が生かされたといえます。
その後も、あべさんは動物たちが登場する絵本を、
別の人が文を書くこともありますし、自身で文も書くことがあります、多く出版してきました。
あべさんの原点に『シートン動物記』がどこまで影響していたかわかりませんが、
男の子の読書体験に『シートン動物記』はとても重要な作品だったのではないでしょうか。
女の子が『赤毛のアン』にはまっていくように。
なので、あべさんが『シートン動物記』から自ら文と絵を描いた作品集が出たとして、ちっとも不思議ではないし、
あべさんの思いが叶えられたようで、読者としてもうれしいシリーズになっています。
その一冊目が『オオカミ王ロボ』というのも納得です。
表紙のオオカミを正面から描いた絵など、あべさんの渾身の一枚ではないでしょうか。
物語の中で、オオカミの足跡が狂暴で知恵の働くロボというオオカミを退治するキーになっていますが、
児童書として刊行されている本ではなかなか見ることができない、オオカミの足跡が描かれていて、
なるほどオオカミというのはこういう足跡なのかと納得がいくように描かれています。
もちろん、実際のシートンの物語はもっと長い作品ですから、
あべさんの本を読んで満足するのではなく、ぜひちゃんと訳された本を次には読むことを薦めます。