谷川俊太郎さんの詩の絵本です。
しかも、ひらがな表記されていますが、これは谷川俊太郎さんが詩人として鮮烈なデビューとなった「二十億光年の孤独」を絵本にしたものなのです。
谷川さんがこの詩を収めた詩集『二十億光年の孤独』を刊行したのが1952年。1931年生まれの谷川さんはまだ20歳の青年でした。
若い詩人の登場に、三好達治は「ああこの若者は/冬のさなかに永らく待たれたものとして/突忽とはるかな国からやつてきた」と推賞したといいます。
そして、おそらく三好以上に、同世代の若者たちがその詩に感銘を受けたにちがいありません。
この詩が持っている、日本文学史上の衝撃は、それ以降何十年にもわたる詩人谷川俊太郎の活躍を予感させるに十分だったともいえます。
試みに、岩波文庫版の『自選 谷川俊太郎詩集』に掲載された詩と、この絵本で描かれた詩を読む比べてみてごらんなさい。
これが同じ詩なのか、わからないくらいです。
原詩は漢字表記もまじります。例えば、「万有引力とは/ひき合う孤独の力である」といったように。
それがこの絵本では、「ばんゆういんりょくとは/ひきあうこどくのちからである」となります。しかも、その字体が普通の活字体ではなく、手書きの袋文字に近い独特なものです。
絵本ですから、絵がありますが、そこに何故かラーメンの世界が描かれます。メン、ナルト、ネギ、メンマ、チャーシュー。
絵を描いた塚本やすしさんにとって、「孤独」とはそんなラーメンの世界につながっているのかもしれません。
誰もが自由に「孤独」と向き合う。これはそんな詩の、絵本です。