『ねぎぼうずのあさたろう』シリーズなど愛読者も多い人気絵本作家飯野知好さんは、
1947年に秩父郡の山間のあったわずか3軒の集落に生まれました。
その村で暮らした子ども時代のことを絵本にしたのが、
『ぼくとお山と羊のセーター』です。
自伝絵本といったら、ぴったりします。
自然豊かな秩父の四季と飼っていた羊や鶏の世話などが
文章でいえば「飯野節」といえる独特な絵のタッチで描かれています。
その中に、養蚕の話が出てきます。
「夏は家の中でいっぱいのお蚕さまを育てます。(中略)
家の中じゅう 桑の葉のにおいとお蚕さまのにおいでツーンとします」
きっと昭和30年代の秩父では
こんな風景があちらこちらにあったのでしょう。
金子兜太もまた飯野さんと同じ、秩父を故郷という俳人です。
その兜太は「朝日煙る手中の蚕妻に示す」という句を詠んでいます。
お蚕さまとともにあった秩父の風景をここにも見つけました。