幼なじみの一夫と一美が、ひょんなことから体が入れ替わったために起こったドタバタ劇。
小学校6年という、成長期を向かえる男の子と女の子のアンバランスな精神状態がかなりスリリングに描かれています。
精神はまだ子ども、体は少しずつ大人に向かっていく時代。
この物語は初めて読んだのですが、何回も見た大林宣彦監督の映画『転校生』の原作で、小林聡美がこの原作の一美のように、女の体に乗り移った男になりきった体当たりの熱演と、尾美としのりのなよなよっとした演技がはっきりとイメージ出来て、初めてのような気がしませんでした。
面白おかしい話ですが、尾道の人間味のあるしっとりした空間と爽やか感の中で受け入れられるのは映画のせいでしょうか。
長谷川集平さんの絵が、児童書にしては刺激的に感じましたが、山中恒さんの描き方にもドキドキさせられました。
何しろ『ハルばあちゃんの手』で人の生涯をドラマのように描いた絵本を見る前は、戦時期の教育を論じる書物で知っている作家だったので、意外性に目が点。
よく考えたら、児童文学の作家だったのですね。
まだ見ていない『転校生』のリメイク版を中学の息子と見てみようかと思いました。