杉山亮氏作の『おはなしめいろ』シリーズから、佐々木マキ氏が絵を担当された一冊です。佐々木氏の絵がお気に入りのパパがイソップ物語を娘にも知ってもらおうと思い、取り寄せました。イソップ物語の中でも代表的な10話が収録されています。
この絵本は読み聞かせや読書が本来の目的とされているものではありません。あくまで、迷路に埋め込まれた文字の中を、正しいストーリー通りにたどりながらゴールを目指すという一種のゲーム本です。従って、各物語は短く、本来のストーリーとも異なったところがあります。佐々木氏の絵も、子供向けの絵本としてはいつになくシュールな感じで描かれています。個人的には少し残念なところですが。
娘が二歳11ヶ月のときにブームが到来し、毎日のようにリクエストされました。当然、当時の娘がイソップ物語など知るよしもなく、従って、意図された迷路遊びを楽しむことはできませんでした。こちらが指で文字をたどっている様子の真似をして一人悦に入っていたという感じです。ただ、そうした遊びの中で、そのとき頭にあった単語を繋ぎ合わせてごくごく短いストーリーのようなものを作れるようになったのは新鮮な驚きでした。そうした言葉遊びを楽しむことができ、大いに盛り上がるひとときを与えてくれたことで、この絵本には感謝しています。
ここで取り上げられた物語はイソップ物語の中のごくごく一部で、迷路に埋め込むという構想の制約上、どうしてもオリジナルのものから離れてしまうものです。対象はイソップ童話の代表的な話を知っていることと、迷路遊びができる年齢ということになります。小学校高学年ぐらいでしょうか。
我が家でも、娘の年齢がもう少し上がればまた改めてブームが到来するかもしれません。それぐらいに、迷路と物語を一つにしてしまうというこの本の企画には奥の深いものを感じます。ただ、今はこの絵本に収められた物語をきっかけに、将来より多くのイソップ物語やその他の有名な童話に触れるようになってくれればと願うばかりです。