一本の大きなケヤキが倒れてから土に帰るまでの物語。
長い長い年月の中で、自分を受け入れていく語りがとても味わい深いお話です。
森の中で一番高く空に近かったケヤキは、草や虫たちから高い場所から見た景色がどうだったか質問されたとき、キジバトの方が知っていると、とても謙虚です。
ケヤキは自分が一番だったことを威張るのではなく、草木や動物たちを受け入れていきます。
ケヤキはいろいろなものから親しみをもって語りかけているのですが、ケヤキの人間性(?)によるのでしょうか。
ケヤキは落ち葉や花に埋め尽くされて、感慨にふけります。
吹雪の中で、クヌギにケヤキが偉大だったと語りかけられて、若いブナの木が頑張っていると答えます。
この本は自然のあるがままを見事に描いています。
登場者はほとんどない、自然の風景に木の言葉が重ねられている絵本なので、目先の変化やリズム感はありません。
子どもにとっては少し難しいかもしれませんが、大自然の営みとして理解してもらえたら、作者の伝えたかったことがとても大きなことだとわかるのではないかと思います。