10人の児童文学作家による、個性がひかる怪談10篇。
小学生が学校生活や家庭内、外出先などで怪異に出会う。
心の隙間から、異形のものが入り込み、異界に連れ去られる様子が生々しい。
一部、大人が主人公の話があるが、ほとんどが小学生の子どもが主人公。通学路や家族と一緒の移動、近所の家などの身近な場所で恐ろしい目に遭う。本人は、ちょっとした弾みにしてしまったことだったり、気のゆるみや弱みに付け込まれる形で、大事になってしまう。
思い残しがあり、この世に留まっている人たちは、思い残しがなくなるといなくなってしまう人もあれば、尽きぬ恨みでどんどん新しい犠牲者を引き入れる恐ろしい集団もあった。理不尽な結末を迎えて、それっきり、という話もあり。話の展開は幽霊次第だ。
必ずしも恐ろしいだけではなく、人の温かさや、寂しさなども感じられる話もあり、バラエティ豊かで飽きない。
ただ、一番恐ろしかったのは、生きている人間の悪意を扱った話。
坂元純作「ヨシオ!たすけてくれ!」では、仲の悪い子どもの兄弟がお互いに持っている残酷さや、埋められない溝を描く。ほかの怪談と違って、現在と未来を扱う異色の存在。この作品を読むと、子どものころに見聞きした嫌な思い出がぶり返してくる。
小さいころに確かに見たが、大人の前ではかわいそうな子やかわいいよい子を演じつつ、裏では弱い者いじめをしたり、横柄で傲慢な態度でやりたい放題の子どもがあった。人間の裏表を使う狡猾さや、抵抗できないように細工してからいじめる残虐性は、年齢に関係なく持ち合わせている人があるものだと思う。
この話は本当によくかけていて、鳥肌が立つ。