タイトルの緊迫感に、なぜか推されて手に取った。
子ども遊び「ローンドンばーしおーちーる、おーちーる」は頭になかった。
大人の目線で読むこともできる歴史書だと思う。
橋という建造物の建築設計に関わる人間なら、冷や汗ものの一冊か。
その苦悩の全容が、スピアの緻密な観察と洞察力によって
実に丁寧に細かく、当時の現実に照らし合わせてだろう、
工業技術革新、都市の文化水準や居住環境にいたるまで、
しかも面白く描きだされているから目が離せない。
途中から何やら落語のように、冗談を真に受けるような
社会の世相を皮肉る唄とともに絵が展開されていく。
一般の国民と、既得権益層と、その狭間に立つ設計家の苦悩が
ページからにじみ出るように読取れる・・・、あっ、
これはいかん!と気付いたか? 唄は振り出しに戻って
「これはマザーグースのおうたよ」とあどけなく微笑んで
622歳の年老いた努力の橋を、新しい橋が敬意をもって見送る…。
とても素敵なエンディングだね。
本気で描かれているから、のめり込める絵本だ。
建築家を目指す子どもたちにも、おすすめ。
復刊ドットコムに、感謝