版画なのかな、という色づかい。白、黒、赤、黄、青、灰色という単純な色彩。ハプニングはありますが、たまごをかえして赤ちゃんが生まれました!という一直線のストーリー。なのに温かく、安心感に溢れていて、まるで作者さんの大いなる愛に包まれているような感じがしました。
人間の場合こどもの誕生、育児は期待の大きさもさることながら、不安だらけであれこれと気持ちが追われてしまうのとは裏腹に、絵本の中では一直線に素直に時間が流れていきます。
パパぺんぎんはたまごを生んだママぺんぎんにたまごをちゃんとみているように言われ、何をするときも一緒です。たまごたちもあたかもたまごではなく、こどものように、楽しそうです。さかなつり、スキー、かいしゃ、うんどうも一緒に楽しみ、もう親子の絆はしっかりできています。しかし、赤ちゃんにもうすぐなる時に限ってパパぺんぎんは目を離してしまい、その隙を狙うかのようにたまごはかえり、赤ちゃんたちは大冒険(しかもからを持って)。雪山に到着して同じような状況のしろくまの赤ちゃんたちに出会い、意気投合し遊んでいました(想像)。そこに同じく赤ちゃんを見失ったしろくまのパパがやってきて、雪の中で目立つ色をしていたぺんぎんの赤ちゃんを自分のこどもと思って連れて帰った、というところ。しろくまのママもちょっとおかしいな、と思いながらペンギンの赤ちゃんとお散歩中です。
赤ちゃんをみつけたパパぺんぎんはほっとしたためかこどもたちが入れ替わったことには気づきません。とってもかわいいから。戻ってもママぺんぎんも気づきません。パパぺんぎんもママぺんぎんも赤ちゃんの色が薄いとは思っても、喜びのあまり入れ替わったことには気づかずお散歩をしているところでおしまいです。
その後・・・ぺんぎんのこどもたちとしろくまのこどもたちは何だかわからないけれど近いものを感じ、仲良く一緒にいつも遊んでいます、という落ちがつきそうなほっこりする絵本でした。
疑問を持たない美しさ、あるがままを受け入れる純粋さこそ、子育ての楽しみではないのかな、と感じました。子育てに悩んだ時にふと我に返れるような絵本と思います。