『えすがたなえさま』、『えすがたよめさま』、ルーツは同じようですが、絵本によってそれぞれにアレンジが違って、それぞれに楽しめるのですが、魅力的なのは寝ても覚めてもそばにいるだけでたまらない恋女房がいること。
それぞれに話に微妙な違いがありますが、何より興味があるのは描く作家の理想のよめさま像。
梅田俊作さん、石倉欣二さんと自分に親しみのあるかつての美人像を楽しんできた自分には、石井聖岳さんの描くのがどう見ても現代的なかわいこちゃん。
おめめぱっちり、まつ毛は長く…。
こんべえは仕事も手につかないほどに、かわいいおよめさんのおはなにメロメロなのです。
このお話は、夫婦像にも現代的なところを取り入れています。
『えすがたあねさま』では、ご主人はよめさまから尽くされる存在、あねさまが自分の絵を描いていたのに対して、このお話ではごんべえが何枚も描きなおしてはおはなの絵を描きます。
よめさまが夫に尽くした時代から、友だちのように、あるいはご主人がよめさまに尽くす時代に変わってきました。
おはなは自分のだんなをごんべえと呼び捨て。
もう一歩進めば、「おはなっち」「ごんぴー」などとじゃれ合う世界ではないか。
この絵本の卓越しているところはもう一つ。
殿様なんてたいしたことしているわけじゃないから、入れ替わっても問題ないと言い切った「年取った賢いけらい(家老でしょう)」の名言。
首相がころころ変わっても、たいしたことではない…なんて、すごい言い方ですよ。
国民はその殿様のために困っているのに…。
何はなくても、可愛いよめさまがいる生活とは、どんなに楽しい話でしょう。
我が家にもそんな時代があったのですよ。