無農薬、無堆肥でリンゴ栽培を成功させた木村秋則さん。
テレビで見たり、『リンゴが教えてくれたこと』、『奇跡のリンゴ』等を読んだりして知っていたのですが、この絵本を実話として受け取るには、正直言うとあっさりしすぎているようにも思いました。
鈴木まもるさんの絵もほのぼのとしていて、木村さんの苦労があまり感じられないようにも思いました。
でも、本当に並々ならぬ苦労をした木村さんは、苦しかったことを多く語るよりも、無農薬、無堆肥でリンゴ栽培を成功させたこと、自分でその道を切り開いてきたことの喜びを伝えたくて、優しい笑顔でつらさはあまり語られない方のようです。
絵に描かれている木村さんは、そんな本人がそのまま絵になったように思いました。
鈴木まもるさんは、木村さんのやさしさと素朴な人間性を描きたかったんだと得心しました。
文章には、木村さんの苦労が淡々と、かつあっさりと描かれています。
だからこそ、この絵本を読みながら、絵本の裏側にあるこの人の苦労の大変な部分を伝えなければいけないと感じた一冊です。
何年もかけて、失敗を重ねて、困難に打ち勝ったからこそ語れる言葉が、ちりばめられているように思います。
だから、ちょっとやそっとの失敗でへこたれるな。
ちょっと努力しただけであきらめるな。
絵本の中の木村さんは、やさしくそう語っているように思います。