<僕たちをセンセイの小説の登場人物にして、物語の中に隠れさせてほしいのです>
この本を読むためには、かなりの想像力が必要です。タイトルの「ゼツメツ少年」とは、中2のタケシ、小5のリュウとジュンのこと。タケシから届く手紙〜3人の旅の記録〜を元に、センセイが書いた物語の世界が広がっていきます。
彼らがなぜ「ゼツメツ少年」なのか。実在していたはずの彼らの身に、一体何が起こったのか。物語の端々から、その状況が徐々に明らかになってくるのですが、最後のエピローグを読んでさらに混乱させられ、最後の最後まで想像力を働かせて読みました。おそらく、一度読んだだけでは理解できない物語。<大事なのは想像力です>タケシのこの一文に尽きる物語だと思います。
「ゼツメツ少年」の彼らには、素晴らしい未来は訪れません。物語の中で彼らが発した心の叫びには、心打たれるものがありました。大人たちがなかなか気付いてやれない子どもの心情がうまく表現されていて心に響きました。そういった意味では、この作品は大人に是非読んで欲しい内容なのではないでしょうか。
イジメ。不登校。自殺。死。そして、生。この物語には、そんな言葉が登場します。リュウのお父さんの言葉「生きるっていうのは、なにかを信じていられるっていうことなんだよ」は、子を思う親の気持ちが最高に凝縮されて紡ぎだされた言葉のように感じられ、涙が溢れました。
世の中には、「ゼツメツ少年」のような子供達が今もどこかにいるのでしょう。そういう子供達が「ゼツメツ」しない世の中にしなくては。もっと子供達と正面から向き合わなければ。大人として、親としてそう思わされた一冊でした。