いせひでこさんの絵が好きだ。
好きだから、いせさんの絵は自然と目にはいってくる。
この絵本もそういう風に、いせさんの絵が誘ってくれた。
春の風のように、夏の香りのように、秋の音のように、冬の静けさのように。
そうだ。いせさんの絵は、季節のやさしさにあふれている。
季節の色に彩られている。
さあ、ページを開こう。
保育園児のけいたくんが大切にしている、ゾウのぬいぐるみ。
空色をしているので、そらくん。
けいたくんはいつもそらくんとたくさんお話をする。保育園のことだとか、もうすぐおにいちゃんになることだとか。
ところが、けいたくんにおとうとが生まれて、ちょっぴりおかしくなってしまうけいたくん。
自分がおかあさんたちの「だいじっこ」じゃなくなったって思ってしまったんだ。
そんな時、そらくんがけいたくんに話しかけてきた。
それは初めてそらくんがやってきた日のことから。
そらくんは初めおかあさんの友達だったんだ。
けいたくんが生まれて、そらくんはけいたくんの友達になって。
けいたくんはそらくんに自分がみんなからとっても大事にしてもらった「だいじっこ」ということを教えられる。
だから、けいたくんはおとうとも大事にしようって。
そうして少しばかり大きくなったけいたくんにはそらくんの声が聞こえなくなってしまう。
そう泣くけいたくんをお母さんはやさしく抱きかかえてくれる。
おかあさんのやさしい腕の線が、いせさんの絵の素晴らしさだろう。
きっと誰にもあった、母の腕だ。