おとなしい少年の影をやっているスムートが、男の子から離れて自由に行動する話。
2018年刊行。(原書は2017年) 外国の絵本だが、今の子どもや大人の状況をとてもリアルに表現していると思った。
主人公の男の子は、もともと大人しい性格だったのか、それとも親や学校などの影響で「良い子」を演じているのかわからないが、
圧倒的に疲れていて、人生に全然喜びがなく、将来に夢も希望のなく、ただ生きているだけ、という感じだった。
最近、子どもの自殺が増えているというが、こういう「ただ息をしているだけ」の人も、死んでいるのと同じだと思う。
影というのは、この人の本心や魂だと思った。いたずらをしたり、いろんなところを跳ねまわったりしたい気持ちが、ひとり歩きする。
誰もが本音と建て前を使い分けて、大なり小なり、窮屈さを感じて生きている。
私はこの絵本は、精神分裂や、生霊など、押し殺した影の部分の暴走の話だと思った。楽しい話で、結末もハッピーエンドだが、
一つ間違うと、破壊的な結末を迎える可能性もあった。
幸運にも、彼は最後に統合できた。