第161回直木賞の候補作が先日発表されました。
候補になった6作品全部が女性作家によるもので、これは芥川賞も含めて史上初ということで大きな話題となりました。
熱き女の戦いを制するのは誰か、発表は7月17日。
といっても、女性作家の活躍は近年目を見張るものがあって、候補がすべて女性作家になってもあまり違和感がありません。
そんな中、手にしたこの絵本の、なんとも贅沢な顔合わせに、ちょっと震えました。
原作が『花の名前』などの短編連作で第83回直木賞を受賞した向田邦子さん、それをもとに文を書いたのが『対岸の彼女』で第132回直木賞を受賞した角田光代さん、そして絵を描いたのが『サラバ!』で第152回直木賞を受賞した西加奈子さん。
こんなごちそう、あまりない。
この絵本の原作は向田邦子さんの短いエッセイで、『眠る盃』に所収されています。
中学生の高校の教科書にも採用されていて、読んだ子どもたちもいるかと思います。
戦時中の家族の姿、特に向田さんが愛してやまなかった父親の姿が見事に描かれたエッセイです。
戦争で疎開をやむなくされた幼い妹、その妹に父は自宅の住所を書いたたくさんのはがきを持たせます。
そのはがきに元気な日はまるをつけておくりなさい、と父を言って幼い妹を疎開先に送り出します。
最初は大きなまるを書いて届いたはがきは、やがて小さなまるになり、ついにはばつになってしまいます。
疎開先でつらいめにあった妹が家に帰ってくることになった日の、父の姿を描いて(西さんの絵は父の足や下駄の様子でそんな父の愛情をうまく表現しています)感動の、絵本に仕上がっています。