日系アメリカ人というアラン・セイ。
子どもの頃育った日本に対する哀愁、日本人以上に日本文化にこだわったこの絵本は大人、特に紙しばい屋さんを知っている世代にはたまらない絵本だと思います。
子どものいない老夫婦はかつての紙しばい屋さん。
山あいの村に住んでいるのですが、久方ぶりに思い出して街に紙しばいを聞かせにやっていきます。
自転車でやってきたのは都市化された町。
そして、風景の様変わりに時代とともに追いやられた自分の職業を懐古します。
テレビが出始め、子どもたちが遠ざかって行くとともに、おじいさんは商売をやめました。
かつては子どもたちの娯楽だった紙芝居が、邪魔にされ見向きもされないようになっていきます。
現実と過去の自分。
年はとって行くものなのですね。
自分自身が浦島太郎状態になってしまいました。
しかし、久しぶりに町に出たかみしばい屋さんは、すっかり変わってしまった町の中で、かつて自分のかみしばいを楽しんでくれた人たちに再会し、拍手をもって迎えられました。
すばらしい展開でした。